歯ぎしりを治す方法は?原因と対策を歯科医師が解説

目次

歯ぎしりしていると言われたのですが…

歯ぎしりは自覚がなく、周りの人や歯科医師から歯ぎしりしていると言われて気づく人が、ほとんどです。日常的に歯ぎしりをすると歯や顎に負担がかかり、歯がすり減ってしまったり、肩コリや片頭痛を引き起こす原因になります。

歯ぎしりって一体、どんな状態なのでしょうか?

歯ぎしりとは、どのような状態なのか

歯ぎしりは、上下の歯が、話したり噛んだりしていない時、非機能的な接触を生じている状態を言います。通常、人と話していない時や眠っている間は上下の歯の間は少し隙間があり、歯には、ストレスがかかっていません。 しかし、噛みしめの癖がある人は日常的に上下の歯が接触し、互いに力がかかっており、その時間が長ければ長いほど、歯にはダメージがあります。

参考文献: 「テーマパーク8020」歯ぎしり

日本歯科医師会 歯ぎしり(ブラキシズム:Bruxism)の分類

歯ぎしりの主な原因

歯ぎしりの原因は明確になっておらず、ストレスや歯並び、噛み合わせの不良などと言われています。人によっては、睡眠中だけではなく、起きている時でも歯をギリギリと歯ぎしりをしてしまう場合もあり、ストレスを歯ぎしりで発散させているとも言われています。

ストレスや睡眠障害が原因

浅い眠りで歯ぎしりが発生

精神的な緊張や仕事などによるストレスの高まりや無呼吸・低呼吸で睡眠が浅くなると、歯ぎしりの頻度が増すと言われています。
睡眠、ストレス、歯ぎしりは関連しており、眠りの質が良くないと、全身の倦怠感から集中力の低下、日頃の仕事の生産性がおちるなどでストレスを感じて、そして、歯ぎしりをしてしまうというような悪循環が生まれてしまいます。

「睡眠ポリグラフィー」を用いた睡眠生理学的研究により、睡眠時ブラキシズム(歯ぎしり)の大半が浅いノンレム睡眠時に発生することがわかっています。

出典元:日本歯科医師会 「テーマパーク8020」「睡眠時ブラキシズム」 歯ぎしり(ブラキシズム:Bruxism)の分類

歯ぎしり・食いしばりなど睡眠中に咀嚼筋が動く現象(Rhythmic Masticatory MuscleActivity:RMMA)の80%以上は、レム睡眠へ移行する浅いノンレム睡眠(N1、N2)で発現することがわかっています

出典元:『Mouth & Body』 「歯ぎしり・食いしばりから考える全身」

参考文献:「ストレス」厚生労働省 

出典元:日本歯科医師会 生活習慣病予防のための健康情報サイト

噛み合わせの不具合

詰め物や被せ物の高さが合っていなかったり、歯並びが悪いとしっかりと噛み合わずに、無意識のうちにバランスをとろうとし、歯ぎしりをおこしている場合あります。

スマホやPC、ゲームなども原因?

スマホ・PC・ゲームと歯ぎしりの関係

通常、リラックスしている状態の時、前歯1〜2ミリ、奥歯で0.5〜1ミリ開いており、上下の歯が離れています。

近年スマートフォンやインターネットの普及で、オンラインゲーム(テレビゲームも含む)に長時間集中することが多くなってきています。ゲームをしている時は、体に力が入り、「噛みしめている時間」が多くなります。これはパソコンなどのデスクワークで仕事に集中している人にも多く見られます

うつむきがちな姿勢で「噛みしめ」は起こりやすく、下を向くと上下の歯の隙間が狭くなり接触しやすくなることも、噛みしめてしまう要因です。ゲームだけではなく、手元のスマートフォンを見ている時も注意が必要です。 このように、「上下の歯を無意識に噛み合わせる癖のことをTCH」と言います。

歯ぎしりの種類

歯ぎしりは、主に3つに分類されます。

ギリギリと音がするグライディング

上下の歯をすり合わせる歯ぎしり

上下の歯をすり合わせる歯ぎしりです。お互いがけずられて、すり減ってしまいます。歯の詰め物や被せ物が取れたり、割れたりし、歯に最も損傷を与える歯ぎしりです。

強く噛みしめるクレンチング

強く噛みしめる歯ぎしり

上下の歯を強く噛み合わせる習癖で、食いしばりや噛みしめはこれに該当します。顎の筋肉にも強い力をいれてぐっと噛み締めます。グライディングのようにギリギリと音が出ないので、気づきにくいため、発見が遅れやすいです。昼間のストレスや集中時に意識的もしくは無意識に起こることが多いです。歯の消耗や破損、顎の関節に負担がかかる可能性があります。

カチカチと音がするタッピング

上下の歯をカチカチと打ち付けます。グライディングやクレンチングと比べると発症は少なく、主に睡眠中に無意識に発生することが多いです。歯が割れたり、歯茎が下がったりする(歯茎の後退)可能性があります。

歯ぎしりが続くと、どのような問題がおこりますか?

歯がすり減る

歯ぎしりで歯が消耗

歯は、硬いものを噛み続けるとすり減ります。同様に歯ぎしりでもすり減り、本来、歯の先端は細かな山形になっているのが、平らな形状になってしまいます。 また、歯と歯がこすれあいぶつかり合うと、歯並びが悪くなったり歯の位置が動いたりすることもあります。

奥歯はまっすぐに噛み合う力には強いのですが、横揺れには弱く、すり減るだけではなく、割れたりすることもあります。

知覚過敏がおこりやすい

知覚過敏

歯ぎしりで過剰な力が歯にかかると歯がすり減り、歯の表面を覆うエナメル質が剥がれていきます。悪化するとその下の象牙質がむき出しになり、刺激が神経に伝わり、冷たいものや熱いものが沁みたりします。また歯ぎしりによって歯肉が負担がかかり、歯茎が下がってしまうことも知覚過敏の原因になります。この症状は「くさび状欠損」と言い、知覚過敏の他に歯がもろくなり、折れることもあります。

詰め物が外れる、被せ物が割れる

歯ぎしりで詰め物が取れる

歯ぎしりにより、詰め物や被せ物、もしくは噛み合わせる歯(対合の歯)の形状が変わり、適合が悪くなります。インプラントの歯の部分(上部構造)も強い噛みしめや歯ぎしりで割れてしまうこともあり得ます。

歯茎に負担がかかり歯周病が悪化する

歯ぎしり自体は歯周病の直接の原因にはなりません。しかしすでに歯周病が発症している場合は 歯ぎしりによって、歯茎・歯根、あごの骨など歯を支えている土台部分に大きな負担がかかり、歯周病の進行が加速することがわかっています。

顎関節症の原因にも

歯ぎしり 顎に負担
噛む力

噛む力は思っている以上に強く、歯ぎしりをする時の上下にかかる力は、通常の食事の時と比べ、顎の関節にかかる負荷は想像以上に大きくなります。歯ぎしりが長い間続くと、顎の関節の一部がずれる顎関節症の原因になることがあります。

歯ぎしりを対策するには

歯科医院での対策

ナイトガード

マウスピースが歯を守ります

歯ぎしりしているとわかった場合、「ナイトガード」と呼ばれるマウスピースを就寝時にはめることで歯ぎしりや噛みしめよる歯のダメージや顎の関節の負担をを緩和します。
ナイトガードは保険適用で歯科医院で作製することができます。

※ 歯ぎしりは、歯のすり減り具合により歯科医院で診断できます。

ナイトガードは保険診療で作ることができます。

マウスピースには、歯ぎしり自体を止める効果はありません。自分で成形できる市販マウスピースの購入もできますが、

市販のマウスピースは

  • 歯並びが変わってしまったり
  • 顎の負担が余計に大きくなってしまったりするので、

もし、市販品をご使用になる場合は、一時的な使用にとどめ、おすすめはできません

噛み合わせの調整

歯の詰め物や被せ物の高さが合っていない場合や歯ぎしりなどによって歯並びや歯の位置が変わり、噛み合わせの不具合が生じている場合は、噛み合わせを調整することで歯ぎしりの改善が期待できます。

自分でできる歯ぎしりの対策

集中して噛み締めてしまっているTCHの対策


歯ぎしり対策付箋

スマホやゲーム、PC作業など下を向いて集中している作業の時の噛みしめ(TCH)は、無意識のうちに行っているため、自身では気付きにくいものです。しかし日中の噛みしめの対策は、自分で気づくこと(認知)が大切です。噛んでいることに気づいたら、「歯を離す」を意識し、習癖にならないようにしましょう「噛んでいない?」などの付箋を貼っておくことも効果的だと言われています。

寝る直前のスマホや飲酒やカフェインを控える

歯ぎしりは睡眠の質に大きく関係しています。 寝る前のカフェインの摂取やスマホや動画の視聴などを避け、リラックスできる時間を設けましょう。生活習慣の改善をはかり、睡眠の質を向上させることが大切です。

ストレスをためないように

ストレスは歯ぎしりの大きな原因のひとつです。 ストレスを緩和しリラックスする方法はご紹介します。

  • 深呼吸深い呼吸は、副交感神経を刺激しリラックスした状態に導いてくれます。ゆっくりとした深呼吸を繰り返すことで心拍数が減り、血圧が下がります。

    自律神経の交感神経は緊張時に働き、副交感神経性はリラックスした時に動きます。休息時には、副交感神経が優位になります。

  • 適度な運動:ウォーキングやストレッチなど「ゆっくり深い呼吸ができる運動」を行い、適度な運動を習慣化しましょう。

歯ぎしりしていてもインプラントはできるのか?

歯ぎしりがあると、インプラントの治療を受けることはできるのだろうかというご質問を受けますが、基本的には、インプラントの治療は可能です。

歯ぎしりがインプラントに及ぼすリスク

ひどい歯ぎしりがある場合、次のようなリスクがあります。

  • インプラントの破損
    歯の部分(上部構造)がすり減ったり、割れたり、ネジの部分が緩んだりします。
  • インプラント周囲炎が発症
    インプラント周囲炎とは、インプラントの歯周病です。 歯ぎしりによって歯茎が下がり、歯周病菌が侵入しやすくなったり、歯周組織が損傷すると炎症を起こしやすくなり、インプラント周囲炎が発症しやすくなります。

歯ぎしりからインプラントを守る方法

インプラントの破損やインプラント周囲炎を防ぐには

  • ナイトガードで上下の歯が直接当たるのを防ぎ、歯や歯茎など歯周組織にかかる負担を減らします。
  • 噛み合わせが悪く、歯に負担をかけるケースの場合は、噛み合わせを調整します。

歯科医院への相談のほかに、生活の習慣を見直し、ストレスを軽減し、歯ぎしりの改善を目指しましょう。

歯ぎしりは歯科医院で治るの?

睡眠中の歯ぎしりは自分でコントロールするのが難しく歯ぎしりを止める治療は、歯科でも医学的にも確立されていません。 歯ぎしりをそのまま続けていると、詰め物や被せ物などが破損したり、歯が割れることもあります。 歯ぎしり自体を治すことはできなくても、それを軽減するヒントや歯を守る方法など、歯科で相談しながら、適切な対処をしていきましょう。 歯ぎしりの心配がある方は、まず、歯科医院への相談をおすすめします。

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